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Issue : 62

湯煙と雪のあいだで、定山渓に身をほどく
— yado journey jozankeiで過ごす一泊

忙しない日々の途中で、ふと「いまはリセットが必要だ」と感じる瞬間がある。定山渓は、そんな感覚に静かに寄り添う場所だ。
渓谷の景色と湯煙、雪の静けさ。この地に新しく生まれた yado journey jozankei を拠点に、サウナと温泉、そして眺める時間を味わう。定山渓の一泊が始まる。

渓谷に佇む、静かな熱を秘めた拠点

雪が舞う中に現れたのは、どこか懐かしさを纏いながらも、新鮮な印象を残す建物だった。
かつて保養所として使われていた建物をリノベーションし、雪国ならではの五角形の屋根形状を、そのまま建築の個性として受け止めている。

深いグリーンの外壁は、冬の澄んだ空気の中で静かに佇んでいる。
目立つというより、景色に馴染みながら、そこに「居場所」をつくっているように見える。

扉を開けると、外の冷気が嘘のように、木の温もりが迎え入れる。

ふっと息がほどける。温泉地の空気が、そのまま室内まで続いているようだった。

ウッドの質感が、温泉地ならではのノスタルジーを感じさせつつも、真鍮や漆喰、モルタルの異なる質感が織り混ざることで、空間に心地よい緊張感を与えている。
ノスタルジーに寄りすぎない、そのバランスがいい。

yado journeyが大切にしているのは、その土地のロケーションを起点にデザインを組み立てること。
定山渓の「熱」と「静寂」というエッセンスが、この家のあちこちに、控えめに宿っている。

蒸気と雪。この地だから味わえるサウナで整う

サウナへ向かう。

母屋のすぐ隣に、親子のように寄り添って建てられた小さな建物がある。

扉を開けた瞬間、熱を帯びたウッドの香りが広がる。

定山渓の大地から湧き出す熱を体現したような、濃密な熱気。全身を包み込む感覚がある。

薄暗いサウナ室の中でする、たわいもない話。
肩書きや役割から離れて、ただそこにいる人として話す。そんな時間が流れていく。

 

ロウリュの弾ける音。砂時計の砂が落ちていく気配。
頃合いを見て、外へ。

  • 触れる木の質感も「整い」のひとつの要素

  • きりっと冷えた水が熱を帯びた身体を包む

雪が舞うウッドデッキで、火照った体を北海道の厳しい冷気が包み込む。それが不思議と心地よい。

デッキに設置された水風呂に身を沈めると、視界が一気に澄んでいく。
深呼吸をすると、肺の奥まで冷たい空気が入り込み、頭の中のノイズが静かに薄れていく。

空を見上げながら、外気浴を楽しむ。
火山地帯のエネルギーと、雪国の静寂。その両方を肌で感じるこの時間は、このロケーションだからこそ得られる「整い」だ。

忙しない日常で散らばっていた感覚が、ゆっくりと形を取り戻していく。

地の恵みを囲み、やわらかな酔いに包まれる

サウナを終え、身体が芯から温まったところで、夜の時間が始まる。
中心になるのは、広々としたキッチンカウンター。

地産地消にこだわり、地元の市場で手に入れた野菜を並べる。
余計な装飾はいらない。素材が持つ力を、そのまま味わうのがこの旅のルールだ。

 

ワインを片手に、料理をつまみながら語り合う。

会議室で交わす言葉とは少し違う、ゆっくりした会話が続く。
心地よい酔いとともに、夜が更けていく。

静かな朝に、次の旅を想う

翌朝、窓から差し込む柔らかな光が、部屋をゆっくり起こしていく。

定山渓の朝は、驚くほど静かだ。

一階へ降りると、すでにコーヒーの香りが漂っている。

窓から入り込む朝日が、床や壁に影を落とす。

木漏れ日のような模様が、室内に豊かな表情をつくっている。

ソファに深く腰掛け、窓の外を眺める。
昨日の雪が嘘のように晴れ渡り、うっすらと霧が立ち込めている。
一杯のコーヒーとともに、身体がゆっくり目覚めていく。

このひとときが、内側のリズムを静かに整えていく。

出発の準備をしながら、二階から荷物を取り出す。

余計なものを持ち込まず、この空間にある「余白」を味わう。そんな滞在だった。

車に乗り込み、バックミラーに映る yado journey jozankei を眺める。
次は、新緑の季節に。そんな言葉が自然と浮かぶ。

雪が舞う定山渓を後にしながら、身体の奥に残っているのは、熱と静けさの余韻。
いい旅だった、と静かに思える一泊だった。

Staff Credit

Written by Takumi Kobayashi

Photographed by Yusuke Oki

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About

泊まるように暮らす

Living as if you are staying here.

食べる、寝る、入浴する。
家と宿、それらがたとえ行為としては同じでも、旅先の宿に豊かさを感じるのはなぜなのか?
そんなひとつの問いから、yadoは生まれました。

家に居ながらにして、時間の移ろいや風景の心地よさを感じられる空間。
収納の徹底的な工夫による、ノイズのない心地よい余白……。
新鮮な高揚と圧倒的なくつろぎが同居する旅のような時間を日常にも。

個人住宅を通して、そんな日々をより身近に実現します。