Interview

Issue : 01

泊まるように暮らす人 vol.1
俳優・松㟢翔平

“泊まるように暮らす”人に聞く、暮らしの哲学。シェアハウス生活、台湾への短期移住など身軽な暮らしを経て、現在は半二拠点生活を送る彼に、“完璧で便利”を目指さない「仮暮らし」なライフスタイルについて、伺いました。

Profile

松㟢翔平

1993年生まれ、埼玉県出身。俳優として映画・ドラマに出演するかたわら、モデルとしても活動。複数のシェアハウス生活、台湾への短期移住を経て、現在は関西へ移住。仕事などに合わせて東京のAirbnbに滞在する半二拠点生活を送る。

  • 松㟢翔平さんへの10の問。

    Question 01

    台湾に移住した理由

    台湾にいる友人から「シェアハウスに空きがあるから来たら?」と誘われて、台湾に住むことにしたんです。当時はまだまだ役者・モデルの仕事も多くなかったので、楽しそうだなと思って。お世話になっていたバイト先の内装屋さんにお願いしてたくさん働かせてもらって。ひたすらお金を貯めて、軽い気持ちで引っ越しました。

    Question 02

    幾度ものシェアハウス生活を経て
    感じること

    ずっと仮暮らしをしてるような感覚です。

     

    長く住むと思ったことはないし、部屋にもそれほど執着はなくて。身軽といえば身軽だし、責任感がないというか。でも、引っ越しには毎回、何かしらの理由がありました。家がなくなってお金がないから後輩と住もうとか、住みたかったシェアハウスに空きが出たとか。三軒茶屋に住んでいたころ、いい店が多すぎて飲み過ぎちゃって。これでは身体がもたないと思って、脱出したこともありました。

    Question 03

    現在、関西を拠点にしている理由

    当時は新型コロナの影響もあって、東京がなんとなく元気のない時期だったんですが、関西へ行ってみるとすごく元気な印象があって。僕は影響を受けやすいところがあるので、東京で元気をなくしてしまうなら、関西に行ってみようと思ったんです。

     

    Question 04

    松㟢さんにとっての「家」の役割

    ダラダラできる、
    リセットできる空間。

     

    もともとインドアなので、ゲームしたり、映画を見たり、絵描いたり、ご飯作ったり、自由に過ごしています。東京に住んでいたころによく来ていたのがこの世田谷公園で、友達の家や事務所へくるタイミングでよく散歩をしていました。

    Question 05

    暮らしに欠かせないもの

    それが、ないんです。自宅を自宅を転々としているので、ベッドみたいな大きな家具も持っていなくて。本とか映画のDVDとか服とか、段ボールで持ち運べるようなものばっかりですね。唯一、ずっと使っているのが業務用のシルバーのデスク。お気に入りで、パソコン作業とか何かものを作ったりするときに使っています。デスクまわりに画材とかを置いて、気軽に作業できる環境を整えています。

    Question 06

    自分が暮らす街に求めるもの

    落ち着くご飯屋さんがあったり、近所に飲みに行ける友達がいたら嬉しいですよね。飲むのが好きで、これまでの街はどれも好きでした。予定を決めるのが苦手なので、気軽に飲みに行けるのはいいですよね。飲みに出かけて、思いがけない人と出会って仲良くなることもありました。

    今の事務所の社長と出会ったのも、二子新地に住んでいるときにちょうど近くに住んでいた大学の先輩のお家でした。関西に引っ越してからは、まだなかなか近所の友達やお気に入りのお店は見つかっていないんですけど、それはそれで誰も知らない街なので無敵な感じがして面白いです。

     

    Question 07

    松㟢さんから見た「東京」

    新しいものが最初に届く場所というような……。

     

    東京は毎日なにかしらイベントがあって、楽しいですよね。映画なんかもそうですが、地方で生まれたものが、まず東京でお披露目、ということが多いですよね。最近はそれも少しずつ変わってきている印象もあります。

    Question 08

    今後どこかに定住する可能性

    定住するというイメージがわきません。

     

    もし自分が親になったりすると変わるのでしょうか。いまは全く定住というイメージがありません。どこからどこまでを「定住」というのかということもあると思いますが。自分には何処どこをレペゼンする、というのがなくて。強いて言えば、暖かい場所に住みたいです。

     

    Question 09

    松㟢さんにとっての「旅」

    どこかへ行きたい時は、半分はだらだらとした旅行、もう半分は現地で何かできないかなと考えたりします。できるだけ長く行きたいので。例えば現地の人と何か仕事ができれば、普通に旅行に行くよりもその国を楽しめるかなって考えたりします。

     

    去年は飛行機が安かったこともあって、事務所の社長・森岡龍とカンヌ映画祭に行きました。これも、龍さんが『ONODA』という映画に出ていて、映画祭に参加するというので、付き人みたいな感じで着いていきました。

     

    旅をするとなるといつもよりはアクティブにはなりますが、旅先でも観光をするというよりはだらっと過ごして、とりあえずフラフラ飲みに行きます。

    Question 10

    「旅するように暮らす」ということ

    「便利」が満ちていない空間。

     

    行き届きすぎた生活というものがあまり得意ではないのかもしれません。

     

    行き届きすぎた生活っていうと大袈裟に聞こえますが、例えば、僕は実家に帰ると「行き届いてるなあ」と思うんです。冷蔵庫に貼り付けられた便利なマグネットフックとか、生活の動線に沿って配置されたミニタオル、ペン立て、チラシ、粘着ローラーとか、何種類もあるシャンプーとか、ゆで卵を割るためだけにある便利グッズとか。生活のためにカスタムされている感じ。それは確かに超便利なのですが、なんかちょっとくらい怪我しても大丈夫みたいな感じというか。

     

    だから、旅先のホテルの行き届かない状態も割と好きなんです。いま自分は場所を変えながら仮暮らしをずっと続けているので、「便利」が満ちていません。「便利」がみちみちに詰まっているのがあまり得意ではないんだと思います。

  • Self Photo6

    俳優 松㟢翔平の撮る
    暮らしの1シーン

    1枚目から、鮮やかなぬいぐるみがいる、今の家で一番好きな景色、いつも作業をしている定位置のデスク、今朝食べたもの。プレステのゲーム機は、この家で一番古いもの。最後は、この家のなかで、あまり見せたくないものたち。

/ 06

Editor’s Voice

  • 世の中は便利グッズで溢れているが、「あったら便利」くらいのものを取り除いてしまって、「ちょっと不便だけど工夫すればなんとかなる」くらいの生活の方が実感があって面白いのかもしれないとも思う。それはまるでトラブルが付き物の旅のようで、「旅するように暮らす」というyadoのコンセプトを体現しているような生活なのかもしれない。

     

     

    Takahiro Sumita (writer)

  • 松㟢さんの話を改めて見返して、フランス人アーティスト、ジャン・ジュリアンが銀座で展示している「The Departure」という作品を思い出した。パリに拠点を持つ彼は、都市と地方を行き来しながら、心電図のように上がったり下がったりするマインドのなかで作品づくりをするのが自分にはあっていると語る。そういえば、場所を移すことで心や身体の健康を保てた経験が、私にも何度かある。今ある家で暮らすという当たり前をあえて疑えば、実はもっと心身体軽く生きていける自分だけのリズムなんかがあるのかもしれない。

     

     

    Rie Kimito (Creative Director)

Staff Credit

Written by Takahiro Sumita
Photographed by Eichi Tano

About

泊まるように暮らす

Living as if you are staying here.

食べる、寝る、入浴する。
家と宿、それらがたとえ行為としては同じでも、旅先の宿に豊かさを感じるのはなぜなのか?
そんなひとつの問いから、yadoは生まれました。

家に居ながらにして、時間の移ろいや風景の心地よさを感じられる空間。
収納の徹底的な工夫による、ノイズのない心地よい余白……。
新鮮な高揚と圧倒的なくつろぎが同居する旅のような時間を日常にも。

個人住宅を通して、そんな日々をより身近に実現します。