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Issue : 61
yado journey jozankei|湯とサウナと、窓の向こうの定山渓。雪国の五角形を、yadoの視点で編み直す。
日本には、ふと心を奪われる美しいロケーションが点在している。目に映る風景、肌に触れる空気、周りから聞こえる音……その土地ならではの時間をすくい上げ、住まいのデザインへと落とし込む住宅レーベルが「yado journey」だ。
このyado journeyから、北海道・定山渓をベースにした家が生まれた。雪国に馴染みのある五角形の躯体を活かしながら、土地に寄り添う一棟へ。今回は yado journey jozankei のストーリーを紹介する。
旅先の心地よさを、暮らしの中へ
yadoの根底にあるのは、「泊まるように暮らす」というコンセプト。
日常から少し距離を取り、遠くの土地に身を置いてみる。
触れる風の感触、光の角度、遠くから聞こえる音。そこにいるだけで、五感が研ぎ澄まされていく。
旅先で感じた、あの心ほどける時間を、どうしたら暮らしの中で再現できるのか。
旅の体験を丁寧にほどきながら、住まいとしてあらためて組み立てていく。そんな想いから生まれたのがyadoである。
中でも「yado journey」は、日本各地の美しいロケーションを旅するように巡り、その土地ならではの景色や空気感を大切にしながら、家をつくる、yado のレーベルのひとつ。
そこにあるのは、派手な“非日常”ではなく、土地の時間に身を委ねるような心地よさ。
土地が持つ潜在的な美しさを引き出し、その場所だからこそ立ち上がるデザインが、静かに暮らしへ入り込んでくる。
大地の熱と、雪国の静けさが共存する地・定山渓
今回の舞台は、北海道・札幌の奥座敷、定山渓温泉。大地から豊かな源泉が湧き、山岳地帯ならではの四季の移ろいが、目の前に現れる。ここには、雪国ならではの美しさと厳しさが共存する。
定山渓温泉街からほど近くに、かつて保養所として使われていた建物がある。yado journey jozankeiは、この建物をリノベーションすることで誕生した。
まず目を引くのが、独特な五角形の形状。
雪国では馴染みのあるかたちで、雪が積もりにくいように考えられた、土地の知恵でもある。
「この土地、この躯体だからこそできる何かを模索したかった」
そう語るのは、地域で木材・建材卸を営む建物の所有者。自らも住宅建築に関わる身として、yadoとともにこの建物に新たな息を吹き込むことを決めた。
定山渓という土地の魅力を、どう受け取るか。
ユニークな躯体を、どう活かすか。
そして、ここで過ごす時間を、どんなものにしたいのか。
そんな問いを手がかりに、yado journey jozankei は構想され、かたちになっていった。
中でも象徴的なのが、本棟の隣に佇む小さなサウナ小屋。
母屋と同じ五角形の形状でデザインされたサウナ小屋が、親子のように並ぶ。雪国の合理から生まれた形を、“過ごすための形”として再現した。
雪国ならではの制約を、ポジティブに解釈し、その土地に息づくかたちを、yadoの視点で整えていく。
ここからは、yadoの5つの設計思想を手がかりに、そのデザインを見ていきたい。
01 - 独自の和洋折衷で生み出すリズム
定山渓の豊かな自然と、そこで味わえる時間。 yado journey jozankeiでは、この土地に流れる静けさを読み取りながら、軽やかさをひとさじ混ぜるように、空間のリズムを整えている。
温泉地の情景を想起させるウッド素材は、地元・北海道産の杉材。
土地に馴染む素材をベースにしながら、異なる質感の素材を随所に織り交ぜていく。
異素材が静かに響き合うことで生まれるのは、懐かしさに回収されない心地よさ。定山渓の空気に寄り添いながらも、どこか新しい。そんなバランスが、空間の奥に残る。
02 - 安易な白を選択しない色の妙
冬に深い雪に包まれる定山渓。一歩外に出ると、視界は圧倒的な「白」に支配される。
白銀の風景に調和するのは、光をやさしく受けとめる、少し深みのある色。
トーンを抑えることで、景色に馴染みながらも、家の輪郭が静かに立ち上がる。
定山渓に流れる静かな時間を受けとめるように、空間に息づく色たち。
喧噪から離れ、そっと羽を伸ばす。そんなひとときに寄り添う。
03 - 収納の集約による空間の余白
定山渓に流れる時間を、いかに高い純度でじっくり味わうことができるか。
そのためには、空間に余計な要素を増やさないことが大切になる。
たとえば、道産材が張り巡らされた壁。
この木の壁の一部は、隣室とつながる扉にもなっている。
左側は化粧室につながる「扉」。壁の一部として空間に溶け込ませた
往来のないとき、扉は空間のノイズになってしまう。ならば、壁と扉の境界をなくしてしまえばいい。
開かれているときは奥へと誘う扉として。閉じられているときは壁の一部として。
機能を隠しながら、空間の余白を守っている。
04 - 生活感というノイズを取り払う
定山渓で過ごす時間は、静かだ。
だからこそ、この家では「暮らしの気配」が前に出すぎないように、細部が整えられている。
シャワーや蛇口のような日々触れる設備も、ただの機能ではなく、空間の一部として選び抜く。
形状や素材感を揃えることで、視界のノイズを減らし、気持ちがすっと落ち着いていく。
定山渓という土地を語る上で、温泉は欠かせない。yado journey jozankeiでも、定山渓温泉から引いてきた温泉を楽しむことができる。
身体を湯に沈めながら、大きな窓の向こうに広がる風景を眺める。余計なものが視界に入らないからこそ、味わえる心と身体の緊張が解けていく贅沢な時間。そんなひとときが、この家にもある。
05 - ゆらりと眺められる風景をつくる
周囲に広がる絵画のような自然。
その景色をただ眺めるだけで、心がゆっくりと落ち着きを取り戻していく。定山渓で過ごす醍醐味は、そんなところにもある。
yado journey jozankei において、窓は風景を切り取る額縁だ。
刻一刻と表情を変える光、風に揺れる枝葉、静かに降り積もる雪。計算された位置に設けられたいくつもの窓から借景が生まれる。
ソファに深く腰掛け、外を眺める。定山渓の土地と共生する住宅デザインが、そこにある豊かさに気づかせてくれる。
定山渓の時間を、家の中に残す
定山渓という地に広がる風景を解釈し、住まいの中に写し取った yado journey jozankei。
リノベーションだからこそ、土地の記憶や躯体の個性も、そのまま居場所の輪郭になっている。
湯に浸かる。サウナで整える。窓の外を眺める。
ここで過ごす時間は、年月を経るほどにその深みを増していくだろう。
yado journey は、これからもその土地に宿る美しい風景と共にある。
Staff Credit
Written by Takumi Kobayashi
Photographed by Yusuke Oki
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